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小説を書いたなら

その日はなぜかポテトが食べたくて
いつもよりも早起きをした
雨が降ってた日曜の朝
風の匂いに君を思い出す

二人は遠く離れて暮らしていた
細い線路に繋がった町
駆け上っていく駅の階段
ポケットの中 切符が折れた

もしも僕が小説を書いたなら
君をヒロインなんかにはしないで
僕のそばで笑って座ってるだけの
そんな人にしたいって言ったら君は
怒るのかな?

君をはじめて見つけたその時から
僕はまるで探偵みたい
わからないことばかりの心
わからないまま寄り添う影

もしも僕が小説を書いたなら
誰にも解けない謎を隠しておくよ
そして答えは出さないまま
結末も描かずにずっと終わらない
物語にするよ

今日はポケットに秘密があって
いつもよりもゆっくり歩く
雨上がりの日曜の午後
1、2秒だけ
目を閉じていて

題名のない表紙を開けた

 

 

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